社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2016年06月21日)時点のものです
鍼(はり)と灸(きゅう)を使って,体のツボに刺激(しげき)をあたえ,心と体の痛(いた)みや病気を治療(ちりょう),予防(よぼう)するのが鍼灸師(しんきゅうし)の仕事です。皆(みな)さん鍼(はり)や灸(きゅう)と聞くと「怖(こわ)い」「痛(いた)い」というイメージを持っているのではないでしょうか。鍼灸師(しんきゅうし)によっても異(こと)なりますが,鍼灸(しんきゅう)で使用する「針(はり)」は髪(かみ)の毛(け)くらいの太さで,痛(いた)みはほとんどありません。神経痛(しんけいつう)や交通事故(じこ)のリハビリといった体の痛(いた)みやアトピーなど様々(さまざま)な症状(しょうじょう)で悩(なや)む人たちが,私(わたし)の鍼灸院(しんきゅういん)を訪(おとず)れます。体の治療(ちりょう)だけではなく患者(かんじゃ)さんの話をよく聞いて,気持ちを受けとめてあげることやメンタルのケアも大切な仕事です。また,鍼灸師(しんきゅうし)の仕事は鍼灸(しんきゅう)治療(ちりょう)だけでなく,治療(ちりょう)院の清掃(せいそう)や治療(ちりょう)時に使うタオルなどの洗濯(せんたく),カルテの整理・治療(ちりょう)道具の注文・治療(ちりょう)院の宣伝(せんでん)・書類やお金の管理などの事務(じむ)仕事なども必要です。
一度きりの鍼灸(しんきゅう)治療(ちりょう)でも「効果(こうか)がない」と判断(はんだん)すると,「あの鍼灸院(しんきゅういん)は効(き)かない」だけでなく「鍼灸(しんきゅう)は効(き)かない」という悪い評判(ひょうばん)がたち,鍼灸(しんきゅう)治療(ちりょう)によって改善(かいぜん)できたはずの他の人まで鍼灸(しんきゅう)を選択(せんたく)しなくなる可能(かのう)性(せい)があります。それを防(ふせ)ぐためには患者(かんじゃ)さんにとって目に見える効果(こうか)を出さないといけません。治療(ちりょう)の結果に対してお金を頂(いただ)いているという覚悟(かくご)を持って働いていますので,一回の治療(ちりょう)でも気を抜(ぬ)くことは決してできません。また治療(ちりょう)をする側からは目に見える効果(こうか)が出ているのに患者(かんじゃ)さんがそれに気づかないこともあります。治療(ちりょう)の効果(こうか)を実感していただくのも仕事の一つです。患者(かんじゃ)さん一人ひとり心と体に合わせた治療(ちりょう)が必要とされます。
医療(いりょう)は日々(ひび)進歩しています。鍼灸(しんきゅう)についても世界中で研究が進み,技術(ぎじゅつ)も進歩しています。この仕事はなんといっても鍼灸師(しんきゅうし)としての豊富(ほうふ)な知識(ちしき)と高い技術(ぎじゅつ)が基礎(きそ)として必要です。自分自身の腕(うで)を磨(みが)くために鍼灸(しんきゅう)に関する本を読むことはもちろんですが,学会に参加して鍼灸師(しんきゅうし)同士で情報(じょうほう)交換(こうかん)を行うなど,日々(ひび)の勉強を欠かすことはできません。 また,私(わたし)は鍼灸師(しんきゅうし)であるのと同時に鍼灸院(しんきゅういん)の経営者(けいえいしゃ)でもあります。鍼灸師(しんきゅうし)ばかりで固まっていては視野(しや)が狭(せま)くなってしまうと思いますので,全く別の仕事をしている人との交流もしています。これからも向上心を持って謙虚(けんきょ)な姿勢(しせい)で仕事に取り組みたいと考えています。
多くの人は病気になったらまず病院に行きますよね。だけど病院ではカバーしきれない病気や症状(しょうじょう)もあります。私(わたし)は,鍼灸(しんきゅう)での治療(ちりょう)は,病院が行う投薬や手術(しゅじゅつ)といった一般(いっぱん)的な治療(ちりょう)と協力できるものだと考えています。例えば,お腹(なか)の中の子どものために薬を使いたくても使えず困(こま)っている妊婦(にんぷ)さんがいたり,長い間,病院で治療(ちりょう)をしても満足できる結果が出ず,弱気になっている人がいたりします。そのような患者(かんじゃ)さんの治療(ちりょう)を行って症状(しょうじょう)が改善(かいぜん)した時の笑顔を見るとこの仕事をしていて良かったと実感します。自分の治療(ちりょう)に結果を期待して通ってくれる患者(かんじゃ)さんに応(こた)えなければいけないという責任(せきにん)の重さを感じるのと同時にやりがいも感じます。
私(わたし)は子どものころ,アトピーや喘息(ぜんそく),頭痛(ずつう)などいろいろな病気にかかり,あまり体が強くありませんでした。病院で治療(ちりょう)しても効果(こうか)が見えず,親に隣町(となりまち)の鍼灸院(しんきゅういん)に連れていかれました。最初はとても嫌(いや)でしたが,治療(ちりょう)が進むに連れてどんどん病気が良くなっていることを実感しました。中学校,高校と部活で剣道(けんどう)をしていましたが,その時のケガの治療(ちりょう)では自分から進んで鍼灸院(しんきゅういん)に通いました。高校生になって進路を考えた時,手に職(しょく)をつけて自営業(じえいぎょう)で働きたい,そして自分が経験(けいけん)した鍼灸院(しんきゅういん)での感動を多くの人に伝えたいと思い,鍼灸師(しんきゅうし)を目指すことを決めました。高校を卒業後,鍼灸師(しんきゅうし)になるための大学で4年間勉強し,国家試験にも合格(ごうかく)して「はり師(し)」と「きゅう師(し)」の2つの国家資格(しかく)を取得しました。大学を卒業後1年半の間,別の鍼灸院(しんきゅういん)で働いて,6年ほど前に出身地である愛媛(えひめ)県西条(さいじょう)市に戻(もど)り鍼灸院(しんきゅういん)を開業しました。
子どものころは,学校の廊下(ろうか)を走ったりして,学校の先生からよく叱(しか)られていました。また,今では考えられないほどのイタズラ好きで,周りの人にたくさんの迷惑(めいわく)をかけたと思います。一方で,当時の小学校の先生から体調の悪い同級生を心配し,看病(かんびょう)していたという話を聞きました。子どものころから苦しんでいる人や困(こま)っている人をサポートしたいと思う気持ちが強かったのかもしれません。その気持ちが今の仕事につながっていているのだと思います。
皆(みな)さんは,叱(しか)られるのは嫌(いや)ですよね。叱(しか)られるのが好きという人は好きな人はあまりいないと思います。しかし,叱(しか)られたくないからといって,やりたいことを始める前にやめてしまうのは非常(ひじょう)にもったいないことだと思います。やりたいことは間違(まちが)っていなくても,やり方を間違(まちが)って叱(しか)られることもあります。叱(しか)られた時は,なぜ叱(しか)られたのか理由を考えてみよう。そして,自分がどれだけ大切にされているか,どれだけの愛情(あいじょう)に接(せっ)しているか気づくこともあります。私(わたし)は,今でも周りの人たちに支(ささ)えられていると感謝(かんしゃ)しています。失敗しても大丈夫(だいじょうぶ)です。それでどんなに叱(しか)られても,失敗したことを人のせいにしないために,自分の生きる道は自分で決断(けつだん)してください。自分で考え,自分だけの道を切りひらく力強さを持ってほしいと思います。